コラーゲンの膜で構成されたファッシアの潤滑油であるはずのヒアルロン酸がネバついて、ファッシアの動きが鈍くなることを前回の記事で書きました。では、どうすれば改善できるのでしょうか?ヒアルロン酸についてもう少し知ることで、解決のヒントが得られるかもしれません。
ヒアルロン酸は長い鎖のような分子で、長さが増すと粘度が高くなります。粘度が上がる理由の一つは、ヒアルロン酸の濃度です。この濃度は圧力と関係していて、使い過ぎや緊張が影響している可能性があります。ヒアルロン酸の生成と代謝のサイクルは速く、体内の1/3が毎日入れ替わっています。運動はこのサイクルを助けますが、乳酸がたまると酸性になり、粘度が上がります。逆に、動かないとヒアルロン酸のリサイクルがうまくいかず、粘度が高まります。また、ヒアルロン酸は温度にも影響され、40度以上では粘度が下がります*4, 5。
これらを考えると、ヒアルロン酸の粘度を下げるためには、適度な運動や身体を温めることが効果的だと考えられます。腰痛治療では、かつては動かずにいることが推奨されていましたが、近年の世界の多くのガイドラインでは適度な活動を続けることが推奨されています*6。マッサージなどの手技療法は、温める効果と、乳酸を排出してアルカリ性にする効果で、ヒアルロン酸の粘性を低下させ、症状を改善させているのではないかと考えられています。
*4 Pratt RL (2021) Hyaluronan and the Fascial Frontier. International Journal of Molecular Sciences 22:6845
*5 1 Kodama Y, et al (2023) Response to Mechanical Properties and Physiological Challenges of Fascia: Diagnosis and Rehabilitative Therapeutic Intervention for Myofascial System Disorders. Bioengineering (Basel) 10:474
*6 Comachio J, et al (2024) Clinical guidelines are silent on the recommendation of physical activity and exercise therapy for low back pain: A systematic review. Journal of Science and Medicine in Sport 27:257-265